小説『男の子と女の子』連載開始。

 

 キムチを食べたりなんかして、明日何をしよう、明日何を食べよう、なんて考えている男が、世界を変えることが出来ないことはだれにもわかることだ。そんなこと、だれにだって、どうでもいいことなのだ。重要なのは、自分に得があるか、性欲が充たされるかのどちらかなのであると、男は考えていた。

 彼にはいくつかの趣味がある。阿国様からもらう奨学金を、全額レコードに費やすこと、大学の授業中、寝ている人の人数を数えること、そしてある女性を偵察することであった。彼はいつも同じアパートの3階に住んでいるある女性を偵察している。その女性も大学生な用で、毎日決まった時間にアパートをでて、決まった時間に帰ってくる。外の階段を上る、ボロい(言葉が悪くてごめん)アパートであるので、階段を上り下りしているところを男は偵察する。別に危害を与えるわけじゃないし、写真を撮っているわけでもない。しかし、今日の服装、昨日の化粧具合、おとといの階段を下がるときの足はどちらから降りていたか、階段を上るときの視線の変化など、彼女が知らないであろうことまでをすべてノートに記録していた。彼は彼女に惚れているのである、すこし気色が悪いほどだけれども。

 彼の聴く音楽はいつも決まっていて、月曜日はくるりの『WORLD’S END SUPERNOVA』、火曜日はユーミンの『午前4時の電話』、水曜日はRachmaninovの『Vocalise』、などだ。悪くない。

 いつか告白しよう、と、彼は野心を抱いている。節約生活を送っているため、排泄物はすべて一つのバケツに入れ、週に一回、外にじゃあっと捨てる。